森村誠一「たった一人からの発想 証明の原点」(講談社文庫)

読了。森村先生のエッセイ集。


組織の中で一歯車として無力にすごす1サラリーマン、彼の鬱屈したパトスが一気にほとばしり、ロマンと反体制の世界に繰出す。という、まあ、大藪春彦の小説のキャラみたいなんですよ、森村先生。(犯罪者になったわけじゃあなくて、ホテルマンやめて作家になっただけですが、スピリッツにおいて、大藪キャラと通じ合ってます)

この本の中でも、名言出しまくり。

  • 私は檻の中で肥えた豚になるより、自由の荒野に痩せた豚でいるほうがましだと思う。
  • これだけ無数の男女が蠢きあっている世の中で、それらのどの異性とも愛し合える可能性を孕んでいるにもかかわらず、一夫一婦の鉄枠で規制するところに、結婚が背負った永遠の十字架がある。
  • ホテルで失った人生の十年間の怨念はやはり十年間かけて晴らさなきゃ、というかんじですよね。ぼくはホテルに泊まると復讐的な気持ちになります。だから、ぼくが本当に書きたいのは推理小説ではなく怨念ですよ。
  • ポール・モーリアは、私の仕事部屋における最も華やかな、そして多彩なお花畑である。ポール・モーリアは、人々の心の最も美しいロマンチックなスペースにおいてのみ、存在させたいものである。