家族解散


来週から、妻が私の実家に来るのだが、それは例の馬鹿猫を、妻の両親にゆだねてくるということである。私は猫とは既に1ヶ月前から離れてくらしていたが、「妻と一緒」ということで安心して来た面もあった。が、妻もこちらに来るとなると、「別離の情」がこみ上げてくるという物である。
もちろん、また、妻の実家に行けば、いつでもあえるのだが。


子供のいない私たち夫婦にとっては、馬鹿猫は子供がわりだった。端から見れば、それは単なる「猫バカ夫婦」であろうが・・。
我々から見た彼には、「ペット/コンパニオン・アニマル」という感じがまったくしなかった。とにかく「家族」であった。それも、縁を切りたくても切れない、一緒に暮らさないとしょうがない「家族」。


他の猫に尻尾をかまれて、ずるずる尻尾をひきずりながらアパートに入り込んで来た野良猫の彼。あまりに気の毒で、獣医で尻尾の手術をしたところ、そのまま居着いてしまった。
当時、同時に飼っていたもう一匹の猫が病気になっても、目の回りを猫パンチしていじめる性格の悪さ。「腸の病気」で便がまったく出なくなり、あちこちの病院に治療に通ったこともあった。
元々、外猫であるため外に出たがり、しかたなく、毎晩夜中に、リードをつけて住宅街をコソコソと散歩して歩いた。「ペット化物件」のマンションを探すため、何十軒も不動産屋を巡った日々も。そして、彼の「我の強さ」に悩まされ、私たちの心身の状態がよくない中、飼うこと自体がストレスであったこともあった。(「癒し」はほとんど与えてくれなかったなあ・・)


「二人と一匹」で家族だった私たち。だが、ついに色んな「限界」が来て、猫は、妻の両親夫婦の好意で引き取ってもらうことになった。
だが、それは「家族解散(全部じゃなくて一部だけどね)」ということである。
悲しい。