小島毅「義経の東アジア」(勉誠出版・智慧の海叢書 ISBN:4585071199)

図書館本、読了。
東洋史家による、「大河ドラマ便乗」の、でも深い、「義経論」本。


本職の東洋史からは、

  • 南宋が金にほろぼされていなかったから、平家は経済的基盤を保てたのでは。
  • 「武士道的な武士」観念ができたのは、宋時代の朱子学が、日本に普及してから。だから、義経は「武士道的な武士」ではない
  • 平家と源氏の対立は、織豊政権徳川幕府の対立のような、「”開国”か”鎖国”か」という対立ではないか

というような、指摘がされている。


でも、それ以外の、著者が色々と勉強したと思われる、専門外の、近年の「日本史研究者」たちの「新しい義経像」が新鮮だ。

  • 義経は「源平合戦以前」平泉に行っていないかもしれない。実際、「源平盛衰記」には、「関東に潜伏していた」とある。
  • 義経が平泉に行っていたとしても、それは、義経の義父の血縁である、公家藤原氏の一族の庇護の元、という可能性もある。
  • 義経が「壇ノ浦」で行った、「漕ぎ手を射る」作戦は、当時の戦争倫理に反するモノであった。平家は、その義経の「野蛮さ」におそれおののいて、「降伏」せず、入水した。
  • 義経一行が平泉に落ちる際もっていた「勧進帳」は、本物である。