図書館本、読了。著者の王銘エン九段は、独特の感覚の持ち主で、TV対局の解説なども楽しみにしている。だが、この本は、それ以上におもしろかった。
とにかく、とりあげるテーマ・切り口が、従来の囲碁書とまったく違うのだ。単なる技術論ではなく、(1)プロはどんなことを考えているのか、(2)「囲碁というゲーム」から生まれ出る不思議な事象。この2点を、わかり易く書き、そして「ゲームとしての囲碁」の深さを、教えてくれる。
具体的には、
- 有名な、幻庵・秀策の対局の「耳赤の一手」以外の真相。
- 「読み」と「感覚」の複雑で意表をつく関連性について。
- 「正着」、と思いきや「失着」、と思いきや「正着」。
- 囲碁の勝敗ルールについての、「日本ルール」と「中国ルール」が生まれてきた経緯についての、明解なその歴史の説明。囲碁の勝敗ルールには、「切賃」というルール(石が分断されるごとに、2目相手に支払うというもの)が長年存在した。戦前の日本でも、一部ではそのルールで打たれていたというのだ。当初の「純囲碁」から、「切賃」を使用する3つのルールを経て、現在の「日本ルール」と「中国ルール」は誕生した、と。
などなど。
実戦はほとんどやらず、もっぱら書籍での鑑賞派のワタシにとっては、実に面白い本であった。
同じ著者コンビの「我間違える ゆえに我あり」という本も、是非読んでみたい。