米沢嘉博「売れるマンガ、記憶に残るマンガ」(メディアファクトリー ISBN:9784840118026)

図書館本、読了。『コミックフラッパー』に1999年12月から、死去直前の2006年10月号まで、6年以上連載されたコミック時評集。
今時点ではこれが「遺作」なんだろうが、「アックス」に連載されていた「戦後エロ漫画史」も未完ながら単行本になると思われるので、もう1冊ですかなあ。


米沢嘉博という人は、「漫画界全体を見渡そうとする」人だったし、評論のスタンスもずっとそうだった。でも、そういう「全体を見渡す」のが、完全に無理になった時代にちょうど亡くなったという気がする。
だって、「漫画」って、「小説」でいえば純文学からジャンル小説、児童文学、SFやミステリ、ポルノ小説、ノンフィクション小説まで含む内容でっせ。活字の世界で、それ全般を「押さえている人」なんていないんだから。
でも、この「時評集」でも、相変わらず、「漫画界全体の状況を押さえよう」としている。何だか、その努力が痛々しい感じがする。


それと、もう一点、「米沢嘉博が2人いたらなあ」という思いもある。
コミケ主催者&漫画界全般の評論家」という米沢以外に、趙マニアックな人としての米沢がいた。が、そちらの分野にはほとんど、力をそそげなかった。
マニアックにコダワッタ仕事をすれば、荒俣宏唐沢俊一のような「カルト・ライター」にもなれた人だったと思う。コミケットをあそこまでにしたので十分「偉大」ではあるが、それも残念だ。