紀田順一郎「幻想と怪奇の時代」(松籟社 ISBN:4879842508)

図書館本、読了。「前半」は幻想怪奇文学に前半生を費やした、著者の回顧文。後半は、幻想怪奇文学について、過去に発表された紹介、評論文、文庫後書きなど。


この「書き下ろしの前半分」が圧倒的に面白い。ちなみに、キダジュン先生、なんと、神奈川近代文学館の館長職まで現在は、お勤めらしく(岡山在住なのにねえ・・)、この書き下ろし分は3日徹夜して書きあげたそう。(70歳代にして、20年ぶりの徹夜であった、と書かれている)


キダジュン先生が、欧米の「怪奇幻想の文学」に目覚めたのは、乱歩の「幻影城」の末尾にあった「怪談入門」から。そして、慶応大学推理小説同好会時代、大伴昌司とここで出会い、意気投合する。


そして、卒業後、「SRの会」で一緒に活動していた、大伴、桂千穂とともに、「怪奇幻想」の同人誌を作成することを考える。そして、永井荷風と仲たがいして、文壇的に干されていた、平井呈一を訪問し、「オトラント城をこの先生に翻訳してもらいたいなあ」と考える。


その後、サラリーマンをやめ、近代史と読書論を専門とするライターとして独立し、自身の生活に悪戦苦闘するうちに、「怪奇幻想文学」への夢が醒めかけていた自分に、10歳年下で大学生の荒俣宏に出会う。「僕は幻想文学でメシを食って生きたいと思います」という荒俣の情熱に刺激され、コンビで怪奇幻想文学の叢書をいくつも立ち上げる。(平井呈一のオトラント城も、もちろん実現)


そして、記念碑的産物として、「世界幻想文学大系」を企画する。だが、「壮大で高踏的すぎる」企画書は、どの出版社に持ち込んでもダメ。
だが、当時は日本の古典本ばかり出していた国書刊行会に、企画書を持ち込んだ所、社長が、「いつからやれますか? うちは即決だから」という意外すぎるお答え。
この瞬間、後のカルト出版社としての国書刊行会は、決定づけられたのだ。いやー、波乱万丈。


妻、夕食の材料を買ってきたが、料理作る元気なし。
べてるの家から届いたビデオを見る。1本目が、妻と状態が似ている人で、妻は共感できたようだった。
20時半に眠くなって、寝る。