小林信彦「昭和が遠くなって」(文藝春秋 asin:4163690301)

図書館本、読了。週刊文春の2006年分のコラムをまとめたもの。小泉政権、安倍政権への怨嗟描写が多く、全体的に暗い本だ。


ピンク・パンサー」リメイク版を好機として、2回、スティーブ・マーティンを紹介してくれているのが嬉しかった。小林さんのファンなら、彼が面白いことはとっくに承知のはずだけど、「週刊誌の読者」を意識してのことだろう。
あと、以下の文章が、意味ありげだったが・・。

喜劇人や彼らの演じるギャグを観賞するのは特殊な行為である。それは創造とは正反対の行為だ。そして、ぼくが「うらなり」その他を書いたのは、そういう、もう一人の自分を切り捨てたからである。

小林信彦ファンとしては、納得できないなあ。もう、さすがにお年で、「笑いを追いかける」のが「虚しくなった」のか。
「うらなり」、それほどのモンじゃあなかったような気がするけど。


それと、これは細かい点だが、「エノケン孫悟空」を論じた回で、「戦時中の中国アニメで『西遊記鉄扇公主』という映画が面白かった」とあり。 小林先生、「鉄扇公主とは孫悟空のことらしい」と書いている。
小林先生、原作は読んでいないのかな(多分、お忘れなんだな)。
鉄扇公主って、牛魔王の妻で、芭蕉扇というすごいパワーの扇を持っている人。(火焔山の火をそれで消すという、子供向け版でも必ず、出てくるエピソードなのに・・)


こんなことは、ネットで調べればすぐわかることなので、編集者・校正者の怠慢だと思った。