藤巻一保著、花輪和一画「江戸怪奇標本箱」(柏出版 asin:4760132643)

図書館本、読了。江戸の怪奇グッズについての逸話の紹介に、花輪和一の絵を添えたもの。


面白かった、エピソード。

  • 地獄に送られる亡者が乗る乗り物が「火車」。だが、近世には年老いた猫の化身と言われるようになった。
  • 馬琴の「兎園小説」に、「江戸のUFO」の話が出てくる。常陸の海岸にお椀を重ねたような円盤状の船(虚ろ舟)が流れついた。中には桃色の肌で、髪が赤い女性が乗っていた。人々は「難をおそれて」、その舟をまた、沖に流した。
  • 蜂須賀家の「水練・指南役」泊甚五右衛門は、代々、竜宮からもらった沓をもっていた。徳川将軍が舟に乗る時は、この沓をもって伴をするという。当主は、毎年元旦、この沓をはいて、竜宮へ参っていた。
  • 「幽霊タクシー」の江戸版「幽霊駕籠」を井原西鶴が書いている。女駕籠の中に若い娘が乗っているので、乱暴に及ぼうとすると、女の左右から蛇が出てきて食いつき、被害者は長く枕があがらない。
  • 承応ごろの江戸で「地獄染め」というファッションが流行した。地獄の亡者たちや、卒塔婆や髑髏の図柄の着物がはやった。吉原の遊女たちも、そういう服装をしていたという。
  • 髪フェチの男、女の髪を切ってがつかまった例は三田村エン魚の本にあるが、江戸の人々はそれをカマイタチのせいにした。
  • 江戸時代、キリシタンバテレンは「三世鏡」という鏡を持っていると信じられていた。その鏡をみると、来世の牛、馬、鳥などの動物の顔をした自分が写る。「天帝如来」に帰依すれば救われると・・。そうして、七日間「バテレン真言陀羅尼」を7日間唱えて、また「三世鏡」をみると、自分の姿が「仏菩薩」の姿に見えるという。
  • 生人形の名人、松本喜三郎
  • ある僧が、ある家で宿を借りると、夜中に老婆が、人形を2体、風呂に入れる。すると人形は人間のように泳ぎ回る。翌日、1体の人形をもらって出かけると、人間が「ととさま、ととさま」と話しかけ、通りすがる人間がすべて転ぶから薬をあげてお礼をもらえと、予言する。ことごとく、そのとおりになったので、恐ろしくなって、人間は川に流した。
  • 澤田瑞穂「中国の民間信仰」(工作舎)にたくさん例があがっているそうだが、中国では、殺した人体から呪物人形を作ったという。
  • 「成仏マシーン」というべき「蓮華台」。戒律破りの悪僧が悪だくみを考え、「金属の蓮華」をつくり、その底の真ん中に穴をあけておいた。そして「これに入れば極楽成仏ができる」と信者をつのり、念仏をとなえている犠牲者は、穴から突き出される槍でさし殺される。(これ、平田弘史か、ふくしま政美のマンガで、見た記憶があるなあ)
    • この話は、実際にあった話か、はっきりしない。幕末の講談師・伊藤潮花が講釈化し、のちに柳葉亭繁彦が「蓮華往生鮮血台」として筆記した。この話は、弾圧されていた日蓮宗・不受布施派の迫害のために使われた伝説の可能性がある。(広めたのは、身延山久遠寺の僧侶たち?)
  • 天狗小僧・寅吉はまず、耽奇会の主催者山崎美成食客になった。そこを平田篤胤がたずねて、強引に自分の用紙にした。