新発掘エッセイだが、特に発掘しなくてもよかったのでは・・・ 山田風太郎(日下三蔵編)「秀吉はいつ知ったか 山田風太郎エッセイ集成」(筑摩書房 asin:4480814930)

図書館本、読了。日下三蔵編集による、風太郎の単行本未収録エッセイの三冊目で、「自宅」「歴史人物」「旅行記」関係のエッセイが集められている。


風太郎エッセイって面白いんだけれど、「繰り返し」を気にしないのが難点で・・。「あー、これ読んだことあるよ」というネタがやたらに目につく。「日本人の運命に一番大きな影響を与えた男。それは日本人ではなく、ヒトラーである」とかね。
それと、「マレーシアなど、オランダに長年支配されていた癖に、なぜいまだに、日本軍の批判を言うのか」というのも、風太郎先生、お得意の持論だが。日本の植民地だった台湾が、それよりもっとヒドイ支配者だった国民党軍のせいで、「相対的な日本びいき」になった例とかあるんだけれど・・。


目新しかったのは・・。
「赤穂騒動で、吉良家に上杉家から助っ人に来ていた2名の武士。その一人のひ孫が葛飾北斎になり、もう一人の子孫は「大久保利通に最期にあった男になった」。これが、風太郎らしき面白いネタだった。
だが、Wikipediaで見てみると・・。
北斎の曽祖父」だという小林平八郎は、実際は吉良家の家臣で、北斎との血縁も怪しいという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E5%B9%B3%E5%85%AB%E9%83%8E
もう一人、山吉新八郎のほうは、本当に上杉家の家臣で、彼の子孫の山吉盛典福島県権令)は確かに、大久保の最期の面会者だそうだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%90%89%E6%96%B0%E5%85%AB%E9%83%8E


同じシリーズの1作目・2作目「わが推理小説零年」「昭和前期の青春」のほうが面白そうだ。こっちを読んでみよう。