辰巳ヨシヒロ「劇画漂流」上下(青林工藝舎 asin:4883792730、asin:4883792765)

読了。「まんだらけZENBU」に1995年から2006年まで、実に11年間も連載された、辰巳先生の自伝漫画。


手塚治虫にあこがれて漫画を描き始めた中学時代から始まり、貸本版元「日の丸文庫」でプロの漫画家となり、やがて初期手塚作品や映画、ハードボイルド小説などに影響されて「新しい漫画の手法」を考え「劇画」を生み出す。結末は「劇画工房」の解散までを描いている。


劇画ブームは漫画史の順序からいえばアフター手塚という印象が強いが、辰巳先生は両藤子先生とは2学年違うだけ。「劇画工房」の作家たちも「手塚チルドレン」であったことがわかる。そういう意味では本書は、「もう一つのまんが道」と呼んでもいい作品だ。


(物語の本筋とは関係ない人物まで含め)登場人物それぞれが、印象深い描写で描かれ、バルザックの全体小説を読んだような感銘を受ける。