図書館本、読了。
著者の長谷川春子は長谷川時雨の妹で、画家にして随筆家。
「美人伝」作者にして本人も美人だった姉と違い、失礼だが彼女があまり美人ではない。その分、剛毅で陽性な人柄だったようだ。
1929年(34歳のり)にはフランスに留学し、パリで個展も開いている。
帰国後は、絵入りの随筆を発表。特に、日本軍が進出していたアジア各地への派遣記者の仕事を多くし、「満州国」(1935年)「南の処女地」(1940年)「東亜あちらこちら」(1943年)などの著書を刊行している。
また、太平洋戦争中には「女流美術奉公隊」の一員として、25名の画家と合作で「大東亜戦争皇国婦女皆勤の図」という巨大絵画を描いたいるらしいが。その絵は以前(http://d.hatena.ne.jp/kokada_jnet/20040828#p1)読んだ、「太平洋戦争名画集」という本に載っていたなあ、確か。
この本は1939年刊行本の復刻。
日中戦争が始まった1937年暮れから1938年初めにかけて、「大阪毎日新聞」「改造」の記者として、長谷川が内モンゴル・中国北部を取材した文章で構成(絵も収録されているが、ごく少ない。新聞に掲載された時点では毎回絵がついていたのだろうが、本にするにあたって、かなり省略がされたようだ)。
さすがに「洋行体験」がある人らしく、「ドライブ」「クリーク」「エキスパート」「カリカチュア」「アトモスフェル」などの横文字が文章内にバンバン出てきて、平成の今読んでも、あまり違和感がない文章である。
構成は以下のとおり。
- 百霊廟の北
- 外モンゴルを訊ねて、モンゴルのパオに止めてもらう。
- 黄河上流を渉る(壮士行)
- 黄河上流を手漕ぎの船で渡った記録。
- 徳王宮の半日
- 回教徒の宴会
- 李守信と蒙古軍幹部
- 陣中の寺内最高司令官(荒茶の湯)
- これは、寺内寿一のようだ。
- 京漢線最前線
- ○○方面大行動開始
- 日本軍の済南攻略戦の様子。
- 戦線の女性たち
- 素朴なモンゴルの少女、日本人のタイピスト・女従軍記者、清王族の女性などを描写
- 東斬のみち(北支美術大同石仏記)
- 軍雑雑記
- ここの部分が一番面白い。
- 北京の町の「そのライオンの文鎮は商王朝時代のものだよ」と吹っかけた、憎めない古道具屋の老人。
- 天津の下町で、ものすごい美味しい羊肉料理屋を発見した話、などなど。
- ここの部分が一番面白い。