図書館本、読了。
リチャード・ブローティガンの訳者として高名な藤本の、アメリカでの滞在体験を描いたエッセイ集。この人の旦那が、黒テントの創設者の一人で、日本文学研究者でもあるデイヴィッド・グッドマンだとは知らなかった。
表題作となっているのは、女の子の赤ん坊を養子にもらうためにペルーに滞在した記録。
だがそれよりも、「白樺病棟の『高砂』」という文が、強く印象に残った。
ニューヨーク州立ウィラード精神医療センターに約60年間入院している、82歳の日系の老人。彼は盲目となり、また何十年も誰とも話をしなくなっていた。
著者夫婦はボランティアとして彼を訪ね、日本語で話しかけ、能楽の「高砂」を流す。だが、老人は穏やかな表情を浮かべながらも、一切語ることはなく、そのまま死去する。