石川桂郎「剃刀日記」(目黒書店 )

図書館本、読了。1942年に刊行された作品集の、1952年の増補版。
しかしなぜか、同1952年には創元社の「創元文庫」にも収録され、1955年には角川文庫にも入っている。この慌しい、刊行出版社の変更はなぜだろう。


東京の屋敷町の床屋の二代目で小学校卒の学歴で俳人となった著者の、昭和初期の床屋を舞台にした随筆的な短編小説集。


「江戸的な空気」を残す、不思議な雰囲気の人物たちが登場する短編が並び、なかなか感動させられるが。
しかし、あとがきで「『あの作品で印象的だったあの人はその後どうなったのですか』とよく聞かれるが、この短編集のほとんどは『虚構の作』なのだ」とあり、読者は愕然とさせられる。