半村良「げたばき物語」(講談社)

1981年講談社刊の第三エッセイ集。84年刊行の文庫版では削除されている対談類あり。自伝的文章や創作論も含む「ALL ABOUT半村良」的内容。「偽の資料」を紹介した「私のネタ本」という文もあり。巻末に、この後起きる「妖星伝7巻原稿紛失事件」で没企画となる「半村良独演会」の予告あり。


しかし、下町の名門高校(両国高校)を出ながら、家庭の事情で大学に進学できず、下積み生活を送ったことへのルサンチマンはすさまじい。
半村の「弟子」の清水義範は、「何も知らない不器用な自分に、考えられないほど親切にしてくれた」と書いているが。むしろ「不器用な若者」だから親切にしてくれたのだと思う。「恵まれた若者」をアシスタントに雇いながら、ウマが合わずクビにしたエピソードも出てくるし。


それと半村のアシスタントだった、現・翻訳家の野村芳夫(竹上昭)についての言及も多々。早川書房時代は、半村の担当編集者だったのか。