中野晴行「手塚治虫と路地裏のマンガたち」(筑摩書房)

図書館本、93年刊行の本、読了。
今やマンガ評論の一方の雄となった中野晴行の、処女作。関西出身の彼らしく、戦後マンガ勃興期の大阪を中心としたマンガ界の歴史を、当事者への聞き取りも交えながらまとめている。
手塚治虫の「新宝島」の「原作者」、酒井七馬から話は始まり、手塚と酒井の確執、手塚フォロー達による赤本マンガの勃興と没落、「日の丸文庫」を中心とした貸本マンガ及び劇画の興亡史と続く。人間くささ漂うドキュメントだ。
特に「日の丸文庫」の経営者兄弟(山田秀三、喜一)と顧問格の久呂田まさみの個性は、際立っており、この3人の評伝的な「日の丸文庫」についての本は、この著者によってもっと詳細なものが書かれることをを期待する。


あと、ちょっとネガティブな存在として紹介されていた(手塚が某新聞に「ロストワールド」をコマ切れ連載していたら、「この漫画、もっと3ちゃんみたいになりまへんかな」と記者に指示されたという)、南部正太郎「ヤネウラ3ちゃん」(小学館文庫 ASIN:4091905943  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%93%EC%95%94%90%B3%91%BE%98%59)、これ欲しくなったけれど、ネット古書店等で見つからず。