耕治人「そうかもしれない」(講談社 ISBN:406203896X)

図書館本、読了。
最晩年作で、三篇の短編が収録。1つは、川端康成にデビュー前からずっと世話になり、気にかけてもらいながら、川端の義弟に「先生への恩を返すのはこの時」とばかり土地を貸した所、騙されたような羽目になり、著者は睡眠薬の乱用で幻覚・幻聴に悩むという話。川端への愛憎が激しすぎて、支離滅裂で不気味な一編。


残り2つは、老残夫婦モノ。子のない夫婦が、妻はボケて老人ホームに入り、夫は舌の下に腫瘍(口腔ガン)ができて入院生活となる。この世に二人、ひっそりと暮らしてきた者たちが、別れて暮らさなければならない悲しさ。
耕治人は、ずっと地味な私小説作家であったが、この作品で最晩年に再評価された。
やはり子のない、私たち夫婦の老後を見るようだ。