保木邦仁+渡辺明「ボナンザVS勝負脳 最強将棋ソフトは人間を超えるか」(角川ONEテーマ"21 asin:4047101079)

図書館本、読了。今年の3月行われた、現時点での最強将棋ソフト・ボナンザと、若手タイトルホルダー・渡辺竜王との対戦は、ボナンザが「善戦」はしたが、結果は渡辺竜王の勝ちであった。


この本は、(1)ボナンザの開発者である保木による「ボナンザ開発の経緯」、(2)二人による「対談」、(3)保木による「ゲーム理論的に予言されている『将棋の神』を作りたいという夢」、(4)渡辺による「プロ棋士の思考法」で、構成されている。


ボナンザは今までの、強い将棋ソフトの方法「よい手を選択読み」ではなく、「いい手も悪い手も、すべて、しらみつぶし読み」(チェスでは普通)という、ある意味、原始的な方法を取ることにより、コンピュータ・ソフトのチャンピオンになった。
また、開発者の保木氏自身は、将棋は全然強くない。
この二重の意味で、将棋コンピュータ・ソフト界での異端児なのだ。


だから、どうしてそんな「異端児」が生まれたかを説明している、冒頭の「ボナンザ開発の経緯」が興味深かった。


保木は、分子レベルでのナノマシンや、分子の運動のコンピュータ・シュミレーションなどの研究者。
1997年、IBMが開発した「最強チェスソフト、デイープ・ブルー」が人間のチャンピオン・カスパロフに勝ったことに興味を抱き。
チェスよりも複雑である、将棋に、チェスソフトで培われた方法論を組み込み、さらに自らの専門分野である制御理論から、「機械学習と、局面評価、選択の最適化ロジックを考え出し」、機能として組み込んだという。