「天ぷら」とはメッキ加工のもののこと

宇野信夫の「私の出会った落語家たち」(河出文庫)を読んでいると。
若い頃の、全然売れてなかった志ん生の話として、年上の女性のパトロンができて、彼女が金の指輪をつけて大事そうにしているので、それがほしくなった。
それで、無理やりとりあげて、質屋に走ったら、質屋の店員に「それ、天ぷらですよ」と笑われたとある。


しかし、昔の文庫にはウルサイほど(注)があったものだが、最近の文庫は、全然といっていいほど、つけないねえ。私は「天ぷら」=「衣をつけるもの」=「メッキ」と解釈して、「ああ、金メッキだったのか」と推測したのだが。これは注をつけるほうが、親切なんでは? でも、その文章のオチだから、注をつけるのは粋じゃないか。宇野信夫を読むほどの人なら、知っておけ、あるいは調べろということか。


ちなみに、こちらのネット上の「日本語俗語辞書」にも記載があり。
http://zokugo-dict.com/19te/tenpura.htm

天ぷらとは、偽物・偽学生のこと。(俗語的解釈)
【年代】 明治時代〜  【種類】 若者言葉
天ぷらとはメッキ加工が施された製品を意味し、そういった製品を蔑む際に使われた(商品の価値を吊り上げるなど、偽るためにメッキ加工された商品が対象)。これは天ぷら料理が表面は衣、中身は具と異なることからきており、単に偽物という意味でも使われた。後に天ぷらは物だけでなく、格好だけで中身が伴っていない紳士や学生を天ぷら紳士、天ぷら学生というように人に対しても使われるようになる(天ぷら学生については学生ではないのに制服を着て学生ぶった偽学生をさす)。
また、警察隠語では特に偽造車(偽造ナンバー)という意味で使われる。