安藤健二「封印作品の憂鬱」(洋泉社 asin:4862483380)

図書館本、読了。「封印作品の謎」「封印作品の闇」ときたシリーズ、三作目。


今回とりあげられているのは、「日本テレビ版・アニメ・ドラえもん」(73年)、「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」(74年製作、日本公開79年)、みずのまこと版のコミック「涼宮ハルヒの憂鬱」(2004年)。


特に前2者の、安藤の執念の取材からうかびあがる、関係者たちの奇怪な人間像はすさまじい。
この「封印」シリーズ、題材が「漫画、アニメ、ゲーム」ということで軽視されているのだろうけれど、どうして「ノンフィクション系の賞」を取れないのか、不思議だ。それくらいに値すると思うんだけれど。


ただ、感想がアップされているブログを検索してみると・・。
「旧どらえもん」の研究HPを作れられていた藤子ファンの方が、安藤に作品のファンに対する取材姿勢に苦言を呈しているのを発見。
http://blog.goo.ne.jp/hballoon/e/8ff3c8b714238c817d5d1d70ece60864

そうやって行われた取材の結果、今までは表に出なかった意外な事情が色々と明らかにされており、その点でこのシリーズの功績は大きいが、それでも私には、素直に楽しんで読む事が出来ない。
それは、著者の「無神経さ」が作品の著作者や制作スタッフだけではなく、ファンにも向けられているからだ。「オバケのQ太郎」や旧ドラの調査では藤子ファンにも取材が行われているが、ファンが取材に非協力的である事に対して、不快感を露わにして非難ともとれる書き方をしており、読んでいて非常に不快だ。


安藤氏がぜひとも「封印」の事情を明らかにしたいと精力的に動いているのは、本から十分に読みとれる。しかし、作品のファン相手の取材がうまく行かないからと非難を向けられては、たまったものではない。