長谷川鑛平「本と校正」(中公新書)

再読した「活字狂想曲」の校正話が面白かったので、続いてこの本を。とはいえ、印刷所の構成者として商業印刷物の校正ばかりしていた倉坂とちがい、この本の著者は岩波書店中央公論社で校正者をつとめ、最後は中央公論社校閲部部長にまでなったひと。
だが、校正者特有の細かすぎるこだわり、労多くして益少ない校正の仕事のアレコレが、著者への恨み節も含めて書かれてあって、面白かった。
岩波全書の「歯車」という本に出てくるインボリュート函数の15ページにわたる数字の羅列を校正し、1箇所、研究者でもある著者が発見できなかった数字の誤りをみつけた記述は壮絶。