山田正紀+恩田陸「読書会」(徳間書店 asin:4198622795)

図書館本、読了。
これは面白かった。山田正紀恩田陸、世代の違う二人が、さらに読み巧者の司会やゲストを交えながら、古典とされるSFを中心に、「実作者」としての実感もふまえながら感想を言っていく。
恩田陸って、実は一冊も読んでないんだけれど、読もうかなあ。


で、とりあげられた作品と、私が面白かった点。

  • 半村良石の血脈」「岬一郎の抵抗」
    • 半村良は、山田正紀のデビュー時に色々助言して、「弟子的」にしたかったそう。実際の弟子は清水義範になったわけだけど。
    • 石の血脈」は、その後のエンタテインメント小説に、決定的な影響を与えた。半村良平井和正の影響はすごく大。
  • アシモフ鋼鉄都市」「はだかの太陽」
    • トリック的には「バカミス
    • 「はだかの太陽」の、「直接会うのが嫌な人間たち」は、まるで現在のメールやネットでしか人間関係を気づけない、我々の時代のようだ。
    • アシモフはロボットをその後、「どんどん人間化」していった。伊藤典夫説では、ロボットはアシモフで、「頭のいいアシモフが、感情のある馬鹿な人間」を理解していった過程だと。
  • ル=グイン「ゲド戦記
    • 1巻目は、その後似た作品がどんどん出て、ちょっと「陳腐」になっている。
    • 各巻ごとに、「いままでの世界観は間違えていて」と、仕切りなおすのがスゴイのか、変なのか。啓蒙的な姿勢を感じる。
  • 沼正三家畜人ヤプー
    • いわゆる奇書とはチガイ、おそろしくクールで論理的小説。
    • ヤプー」世界は、祇園社会に似ている。
  • 小松左京「果てしなき流れの果てに」
    • 「宇宙意志としての進化」と「それへの反抗」。これは、戦後文学とマルキシズムへの反抗をひきずっている。
  • 山田正紀「神狩り」
    • 脚注でびっくりしたが、「東京ゲリラ戦線」の藤本泉は89年、旅行先のフランスで消息不明となった!!!!
    • これはびっくり。「人間は関係代名詞が七重までしか理解できない」「神の言語は十三重ある」。この「七重まで」には、特に元ネタはない。思いつきだった!!!
  • スティーブン・キング呪われた町」「ファイアスターター
    • このあたりまでは、編集者がカリとっていた。「大家」になってからは、編集者の抑えが効かなくなって、「長い長い本」を書くようになった。
    • キングは身の回り10メートルの自分の知ってることしか書かない。(ワタシの意見。キングはまったくインテリ作家ではないバカ作家。なのに、小説のテクニックばかりスゴイのがスゴイ)
  • 萩原望都「バルバラ異界
  • 恩田陸「常野物語」
    • これらは、未読なので、ワタシは話についていけなかった。