米沢嘉博「手塚治虫マンガ論」(河出書房新社 asin:4309269591)

図書館本、読了。
没後に編集された、米沢が手塚治虫について論じた文章を集めた本。


第1章は、「手塚治虫大史」「手塚治虫小史」と題された2本の文章を収録。網羅的にほぼすべての作品に触れながら、手塚の作風の変化、手塚マンガの独自性、他の漫画家との関係などを丹念に追っていく、まさに、この著者しかかけない、手塚論。
第2章は「初期三部作」「火の鳥」などの代表作を論じ、「物語と世界を描く」作家であった手塚治虫の作家性を、示す。
第3、4章は、主に、「手塚後」の、求心力のなくなった漫画界を論じた文章を収録。
第5章は、ヒゲオヤジ、アセチレン・ランプ、ロックの「手塚スターシステム」の名優を、短編まで含めて網羅しながら論じる。
第6章は、「手塚治虫エログロナンセンス」を論じた文章。ここは、著者も楽しくかけたようで、文章に精彩がある。


いずれの章も、米沢嘉博にしか書けない、「個々の作品についての鋭い目配せ」「作家の全体像を見る」という、2点を兼ね備えた文章ばかりであり、そのことは、みなもと太郎による解説で、明解に書かれている。
この本の熱気にあてられて、つい、手塚の未読マンガを、かなりの冊数、AMAZONで注文してしまった。