関西じゃりン子チエ研究会「じゃりン子チエの秘密」(データハウス asin:488718896X) 呉先生の説が論破? 「チエちゃん」の猫たちは苦手だなあ

昨夜の眠れない時間に読了。「サザエサンの秘密」などの、漫画の「謎本」がブームになった、90年代初めに出版された「じゃりン子チエ」の謎本


ところで、呉智英の「現代漫画の全体像」には、「じゃりン子チエ」の登場人物・テツ(チエの父親)について、「ヤクザのような暮らしをしながら、ヤクザを嫌っているテツは、被差別部落出身者と思われる」と書かれていた。
(ちなみに、「ヒラメちゃんは朝鮮人だろう」とも、先生は買いていた)


この記述を読んだ時は、「説としては面白いけれど、そこまで、決め付けていいのかなあ」と、思っていて。いまだに、このことは気になっていて、以前、大阪出身の妻に聞いたりしたのだが・・。
この本を読むと、呉先生の説に対する反論がかかれていて、ナルホドと、思った。


「チエ」の作者のはるき悦巳は、西成(釜ヶ崎)出身で、「じゃりン子チエ」の舞台は、実際にあのあたりの雰囲気そのままだそうだ。
(ちなみに、はるきは、中学一年で大阪でも別の地区に引っ越して、その後、西成に住んだことなないそう。なので、「小学生時代の記憶だけ」であの作品を描いた、というコトになる。西成の雰囲気が「超独特」とはいえ、スゴイ漫画家だ)


そして、釜ヶ崎の日雇い労働者の間では、日雇い賃金をピンハネするヤクザに対する反感が非常に強かったそ
うで・・。
そのため、「ケンカが強くて、のらくら暮らしている遊び人」である、テツのようなキャラであれば、「ヤクザを殴るのが趣味」でも、まったく違和感がないと・・。
特に「被差別部落民」という設定は、はるき越巳の中でもないのではないか、という論じられていた。


ちなみに、テツは、意外なことに、プラカードやポスターを作るのも好きらしい・・。これも、プラカードやポスターで組合闘争を盛んにした、釜ヶ崎の雰囲気が伝染した、とのことだ。*1


ところで、「じゃりン子チエ」の連載は78年に始まって、97年に終わっている。
(ネットで知ったのだが、連載終了した理由が『親の介護!』というのが、ユニーク。アシスタントは奥さんしかいなかったそうで、週刊連載を維持できなくなったとか)
今回、「チエ」の最終巻を読んでみたのだが、97年の釜ヶ崎を襲っていたはずの「平成不況」の嵐はまったく登場せず、連載開始と同じ、ノンキな風景が描写されていた。
主人公のチエが「小五」のまま成長しない、「うる星やつら」タイプの作品なので、作品の中でも時代は流れないのだろうが・・。
最後はサザエさん並みの「ファンタジー・ワールド」に、なっていたようだ。


さらに余談だが・・。
私は昔から、この漫画の中の、「コテツ」をはじめとする「猫たち」の描写がすごく嫌いで苦手で・・。その部分だけ飛ばして読みたいくらいなのだが・・・。
この「謎本」でも、井上ひさしが(確か朝日新聞で)、「猫が人間以上に人間らしい、子どもが大人以上に大人らしい。すばらしい作品」と絶賛している文章が引用されている。


うーん、あの猫たちが繰り広げる、クサイ三文芝居、本当に嫌なんだけどなあ。(それは、はるき自身の「照れ」のため、人間では実現できない「ロマン」を猫に託しているのだが・・。その「ロマン」が、古くさすぎるのよ)
猫好きなら、猫はもっと普通の猫らしく描いて欲しかったなあ。


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*1:ミクシーの「呉智英」コミュ(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=13856&comment_count=332&comm_id=4978)に、この件を書き込みしてみたら、親もホルモン屋をしていて、ヤクザが嫌いなテツは、在日朝鮮人の可能性が高いというコメントをもらった。まあ、「オモニ」とか出てこないから、『裏設定として』だろうけれど、なるほどねえ。