田原総一朗「青春 この狂気するもの」(三一新書 1969)

図書館本、読了。1965年から、テレビ東京で、主に「過激な若者たち」を題材にTVドキュメンタリーをとっていた、当時35最の田原総一朗の著書。
「この本を読んでショックを受けた」原一男は、田原の影響を受けて、のちに「ゆきゆきて、神軍」や「全身小説家」を撮った。


題名は「この狂気するもの」と、当時っぽい過激な題名だが、この本に登場する、田原の取材対象の若者たちは、全然「狂気」していない。田原が用意した「筋書き(清水達夫内田栄一が携わることもあった)に従って、とても素直に演技したり、「面倒だからやらない」とボイコットしたり・・。「青春のエネルギー」など感じられない。
まあ、そりゃそうだ。いくら時代が「若者達の反乱の時代」とはいえ、よほどの「天才」以外、20歳そこらの若造が、たいしたことを、カメラの前で言ったり、やったり、できるわけがないのだ。実に凡庸な若者たち。


そして、田原は、「取材対象は、カメラを見て演技してしまうため、ドキュメンタリーは本質的に『やらせ』になってしまう」ことを吐露している。


この本で面白かったの事例は、以下の2点。原一男も、これに反応したのではないかな。

  • 北朝鮮への帰国船に乗った女の子を取材した番組があった。彼女の家族も恋人も「民団」系で、田原は彼女が「北」へ帰国する理由がわからなかった。だが、あとで考えると、テレビカメラで映されるうち「民族の英雄」となった彼女が、そのために帰国してしまったのではないかと、田原は推測するのだった。
  • バスガイドの20歳の女の子を取材したのだが、彼女が優等生的な回答ばかりして、番組として面白いものにならない。だが何故か、彼女は他のガイドたちから毛嫌いされているのだった。その理由を知りたくて、「彼女を追い詰めよう」と、彼女にカメラはべったりへばりついて「密着取材」をした。すると彼女から、「男性たちに強姦され、性病を移され、その噂で嫌われている」という答えが出た。