心がヤラレタ・・ 映画「赤ちょうちん」(asin:B0000UN584)

たまたま、日本映画専門チャンネルで放送していた藤田敏八監督のこの名作。妻が「私はこの映画大好きだよ。暗いけどね〜」というので、その助言の後半を無視して、つい見てみた。


かぐや姫の曲「赤ちょうちん」をモチーフに作られた映画で、映画内でもこの映画が散々流れ(ウザイ)。そして山本コータローも脇役で出演と、完全に「フォークソング・ブーム」にあてこんだ企画。


だが、お話は陰々滅々で・・。(ちなみに、「日本映画専門チャンネル」にこの映画をリクエストした人は、「高校生のときにデートで行った」というが。こんなに「デート映画」に向かない映画もないだろう)


幼稚な若いカップル(女子は秋吉久美子)が、アパートの大家や管理人と不和になり、転々と引越しを繰り返していく。この「しつこいまでに登場人物たちを不幸にさせる」お話は、脚本担当の中島丈博のセンスかな。「芸の細かい不幸」が全編てんこもり状態。


だが、藤田敏八の演出も相当なもので・・。カップル二人の人間像をあまり描いていないから、彼等二人は記号のような存在で「感情移入」がまったくできない。


藤田の「軽いタッチの、思いいれのない演出」は、すべての登場人物を「フィクションの登場人物として特権化されたものではなく、取替え可能な部品」のように見せる。そのため、個々の人物は、「ゴミクズのような無力な存在」に見えてしまう。


そういう次第で、この映画中に登場する「不快なデキゴト」は、すべて観客である私に向かって攻め立ててくる。見終わって、かなりヤラレタ。