斉藤守彦「日本映画、崩壊 邦画バブルはこうして終わる」(ダイヤモンド社 ISBN:4478001325)

図書館本、読了。


近年、邦画の売り上げが洋画の売り上げを上回り、一見好調に見える日本映画だが、著者はこれを「バブル」とみる。
それは、「TV局を含む『製作委員会』での製作」+「有名な原作」+「シネコンでの上映」というヒットの方程式が、様々な綻びを見せているためだという。


シネコンの数は、現在はどんどん増えているが、総観客数は増えておらず、シネコン同士で客の取り合いが始まっている。そして、初期のシネコンは設備が老朽化しているが、それをメンテする予算があるか、不安であるという。


また、町山智浩さんもよく触れているが・・。
「映画紹介記事」を書いた際の、映画会社・配給会社側の「検閲」がすごいとも書かれている。
「こちらの指示するとおりに直さないと、資料写真を貸さない」と脅してくるから、「写真がないと紙面ができない」と考える編集者は弱い。


このままいったら、将来的には、ちゃんとした映画ライターって、写真がなくても大丈夫な「イラストライター」タイプの石川三千花とか、三留まゆみくらいしか、「批判的な記事」は書けなくなるんじゃないか。
(まあ、この二人は「好きな映画」しか描かないタイプなのだけれど)


この本の最後に斉藤さんが、言いたかったことがまとめて書いてある。

制作費を調達できないプロデューサー、オリジナル・ストーリーが書けない脚本家、テレビ局がなければ宣伝ができない宣伝マン、「記名原稿なんて怖くて書けない」映画ライター、働けど働けど生活が楽にならない現場スタッフ、休憩時間内にコンセッションのオーダーができない映画館スタッフ、そして人手不足でそんなアルバイトを叱れない支配人。こうなるともう、産業の呈をなしていない。これぞまさしく、「日本映画崩壊」だ。