うしおそうじ「手塚治虫とボク」(草思社 rakuten:book:12024133)

図書館本、早朝に読了。
2004年に82歳で亡くなった、うしおそうじ。彼は戦前から東宝映画に入社し特撮とアニメを学び、戦後、東宝争議で追放後、漫画家となる、そして、ピー・プロダクションを創立して、TVのアニメ、特撮番組を作成した。


その彼が晩年、自分の人生と深いかかわりのあった三人の人物、円谷英二手塚治虫山本嘉次郎についての、評伝三部作を構想した。山本については執筆が間に合わなかったが、円谷については、「夢は大空を駆けめぐる」(rakuten:book:11022382)として出版された。(この本は、これから読む予定。ちなみに、2冊ともAMAZONになし)
手塚についての本が、本書である。


初めの出会いは、アニメーターから漫画家に転進として、苦戦していた頃のうしお宅を、突然、手塚と学童社の編集者が訪れるところである。手塚がうしおの漫画を推薦して、「漫画少年」に連載を書くよう、わざわざ編集者と同道してきたのだ。
そういう経緯で、二人は意気投合し、馬場のぼる等を含めて親密に交際する。ここには、神格化されていない、手塚の生身の姿がある。
喘息の発作を起こした、うしおを、手塚と馬場が病院に運びこむ。旅行先で高熱を発した手塚は、うわごとで、「ボクが死んだら、アトムの続きは、うしおさん、あなたが描いてください」とつぶやく。


やがて、手塚もうしおも、ほぼ同時期にアニメーションを制作し始める。


そして、感動的なのは、うしおが、手塚原作の「マグマ大使」の実写化を、依頼に行く場面だ。TV局に企画を出すぎりぎりの期限に。
うしおは手塚に会うため、自分は所属していない「漫画集団」の忘年会に入り込む。そして、以前に「鉄腕アトム」の実写化のヒドイ出来に懲りていた手塚を、「マグマ大使」の実写化には絶対の自信があると、うしおは説得する。(うしおには、円谷英二直伝の、実写のノウハウがあったのだ)
そして、手塚の名刺の裏に「マグマ太子の実写化を許可する」と書いてもらい、うしおは企画を提出しに引き返すのだ。