図書館本、読了。2000年に刊行されて、日本SF大賞を受賞した、「論争としてSF論」のアンソロジー。
「名前は知っているが読んだことがなかった」評論を、たくさん読めて、面白かった。
収録されているのは、以下のとおり。
- 安部公房「SFの流行について」「SF、この名づけがたきもの」
- 小松左京「拝啓イワン・エフレーモフ様」「”日本のSF”をめぐって ミスターXへの公開状」
- 福島正実「未踏の時代」「SFの夜」
- 石川喬司「ハインライン『宇宙の戦士』論争」
- 山野浩一「日本SFの原点と指向」
- 荒巻義雄「術の小説論 私のハインライン論」
- 柴野拓美「『集団理性』の提唱」
- 田中隆一「近代理性の解体+SF考」
- 川又千秋「明日はどっちだ!」
- 筒井康隆「現代SFの特質とは」
- 笠井潔「宇宙精神と収容所 小松左京論」
- 永瀬唯「ブルース・スターリング『真夜中通りのジュール・ヴェルヌ』訳・解説」「スペキュレイティブ・アメリカ 思弁小説の父としてのハインラインとアメリカ保守の思想」
- 伊藤典夫「スコッティは誰と遊んだ? オーソン・スコット・カード『消えた少年たち』を読む」
- 野阿梓「ジャパネスクSF試論」「花咲く乙女たちの『ミステリ』」
- 小谷真理「ファット/スラット/レズビアン 女性SF読者の文化史」
- 大原まり子「SFの呪縛から解き放たれて」
「拝啓イワン・エフレーモフ様」は、小松のSFへの希望、期待の強さに感動。
そして、柴野拓美がこんなSF論を書いていたんだね。知らなかった。
それと、田中隆一という人は存在すら知らなかったが、日本原子力研究所に勤務する放射線応用技術の専門家らしい。だが、当時の現代思想を駆使して、ニュー・ウェーブSF擁護論を書いている。