ジョー・サッコ「パレスチナ」(いそっぷ社 asin:4900963372)

図書館本、読了。87年から起きていた「第一次インティファーダ」が収束に向かっていた、91年から92年にかけて、パレスチナ「西岸」及び「ガザ」に滞在してパレスチナ人たちにインタビューし、その記録を漫画化した、「コミック・ジャーナリズム」の本。


パレスチナ人たちが、兵隊たちに銃で撃たれたり、殴られたり腕を折られたり、警察で何日も拷問されたり、刑務所でひどい目にあったり、などといった悲惨な場面が次々と続くのだが・・。
そういったサッコが「聞き出して想像で描いた絵」よりも印象に残るのは・・。実際にサッコが目にした、そういう辛い経験を話す際の彼等の、何ともいえない苦しげで絶望的な表情だ。


太い枠線で、人物の顔の陰影もすべて手書きで描く、ロバート・クラム以来のアメリカン・コミック特有の絵柄が、パレスチナ人たちの苦悶の表情や、絶望の表情、怒りの表情などを見事に表している。また、時に遠近法を無視して大胆に描く構図が、登場人物たちの心理を、見事に表現する。
国自体が収容所的であるおそるべき「パレスチナ」を、全身で体験できる、素晴らしい本だ。