好村富士彦「真昼の決闘 花田清輝・吉本隆明論争」(晶文社 ISBN:4794936907)

図書館本、読了。1986年刊行本。
呉智英先生の「バカにつける薬」で、吉本論争で敗れた「花田主義者」のあがきのような本、と紹介されていたので読んでみた。
86年当時の読者の便宜を図るため、当時の政治状況を詳しく書いた上で、花田・吉本論争の流れを書いてある。
論争以前の花田は、「モラリスト批判」と名乗って、「近代文学」の同志だった、荒正人大井広介山室静それに埴谷雄高を批判していた。


その勢いで、当初は花田は吉本を批判していたのだが、戦中の花田の「レジスタンス的な反戦運動」が「不純」だと吉本に批判されると、とたんに黙ってしまった。これが「花田ひいき」の最大の謎と呉先生も書いているのだが。この本ではなんと、「吉本を勝たせることで、調子にのらせ、のちに破綻させる、『意地悪爺さん・花田』の深い読み」ということになる・・・。
そのせいで、吉本は「左翼陣営の第一人者」と調子にのり、のちに馬脚を現したのだという・・。いやー、「ひいき」は考えるもんだねえ。