千原ジュニアによる、将棋の羽生善治名人に関するガセ2つ

昨夜の「にけつッ!!」で、千原ジュニアが、将棋ファン的には有り得ない羽生善治名人についての「逸話」を2つも話していた。

  • (ガセネタ)羽生名人が100人相手の多面指しをしていた。いままでで「100人相手にすべて勝つ」という記録はなかったので「新記録」かと思いきや。1人の小学生との対局にだけ、負けてしまった。それは、完全に不利な形勢だった少年が、待ち時間の間に将棋板をひっくり返してしまったから。だが羽生名人はその少年のズルをとがめずに投了した。後でその理由を尋ねられたところ、「少年の勝ちたいという気持ちを大事にしたいから」と答えたという。
    • プロ棋士が多面指しをすることは確かにあるが、それは「指導対局」で行うのであり、「全局勝つ」ということに挑戦することはない。なので、初期シュチュエーション自体おかしい。
    • なお、「いかに多くの人数を相手に多面指しができるか」という「記録への挑戦」はある。確か、200人指しとか300人指しとかの、記録を持っている棋士がいるはず(先崎学八段だったか・・)。
    • 将棋はマナーを大事にするゲームであり、「将棋板をひっくり返す」という最悪のマナー違反行為を、「羽生名人に指してもらえる」という貴重な経験時(生涯に一度かもしれないのだ)に、将棋ファンの少年がするとは、絶対に思えない。まして、それを羽生名人が、「勝ちたい気持ちを大事にして」見逃すなど有り得ない。
  • (ガセネタ)羽生名人が2日制のタイトル戦の対局でハンサムなナルシスト棋士と対局していた。1日目の最後のあたり。相手の棋士は鼻に手を置いて考えるタイプで。その棋士が指した後、羽生名人の手は「誰が見てわかり切った指し手しかない」のに、長考に入り、そのまま封じ手になった。その理由は、相手の棋士が指した際、駒に鼻くそがついていたこと。その鼻くそがテレビに写ったままなので、相手のナルシスト棋士は屈辱的な思いをした。そのため、翌日は羽生名人の圧勝となった。
    • ハンサムな羽生名人のライバルとなると、郷田真隆九段が考えられるが。棋士は確かに将棋を指す場合には集中して考えるが、だからといって「鼻くそをつけて駒を動かす」ということは、ほとんど有り得ない。
    • また、羽生名人は「盤外戦術」は使わないタイプの棋士であり、「相手を恥ずかしがらせて、自分を優位に導く」などということも考えられない。
    • また、「二度指し禁止」というルールがあって、一度、動かした駒には基本的にはさわらない「マナー」があるが。しかし、駒が置かれた枠内のポジションがよくない場合等に、それを直す動作は許容されている。なので、相手の棋士はその鼻くそを駒から取ってしまえばよかったのである。


そして、千原ジュニアケンドーコバヤシも盛んに「打つ」「打つ」と語っていたが。
将棋は「打つ」ではなく「指す」ものであるということを、一般の人に知ってもらうことは、永遠に不可能なのだろうなあ。


また、「将棋の棋士は何百手も先を読むんだよなあ、すごいなあ」ととも言っていたが。これも、世間の人がよく抱く、典型的な誤解である。
将棋の手というのは、1手ごとに自分も相手も選択肢があり、それは、ほとんどの場合が「必然手」ではなく「有力な手が何個もある」という状態である。
であるので、何百手も先が読めるわけがないし、読む必要もない。それに、プロの将棋が終了するまでの平均手数は百数十手である。


棋士に必要な能力は、さまざまな有力手の分岐の結果として考えられる「数十手先」の局面を、複数個、頭のなかに浮かべ。それらの「今後、現れるだろう有力な局面」の優劣を決める能力である。
この「様々な局面の優劣を決める能力」を「大局観」と呼ぶ。強い棋士は、単純に手を読む能力が優れているだけではなく、この「大局観」も優れているのである。


上記の過程の中で、結果的に「数百手を読む能力」は必要であるが、それは縦に伸びている訳ではなく、分岐して枝状にわかれた、指し手の流れなのである。