劉文兵「中国10億人の日本映画熱愛史 高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで」(集英社新書 isbn:4087203565)

図書館本、読了。中国から日本に留学して日本映画研究家となった人の著書。文革後の日本映画、日本ドラマ、日本アニメなどの、中国での受容のされかたを論じた本。


1978年、文革後の「新路線」時に初めて公開された外国映画は、高倉健主演の「君よ憤怒の河を渡れ」であり、これは中国で8億人の人が見る、大ヒットとなったという。
日本社会のきらびやかな先進性の魅力もさることながら、高倉健のマッチョな肉体の魅力、そして、「不当に批判された者の復讐」というのが、文革を経験した人々の共感を生んだせいという。


そして、その後、ヒットした「砂の器」や、テレビドラマ「赤いシリーズ」などは、文革で否定された「家族愛」を教える作品として評価されたという。そして、「おしん」には、資本主義的に「努力して成功していく」物語を、中国の観客たちは読み取った。


ところで、この本からトリビアを1つ。

  • 日本映画の巨匠たちは、中国では一般にはほとんど知られていないが、黒沢明は例外である。それは、彼の名前が「黒くて光沢をもつ」というイメージで、整髪料のコマーシャルに使用されたため。